「レザークラフトってどんなルーツがあるの?」
「レザーや革の歴史が気になる!」
レザークラフトとは皮革(生き物の皮)を素材にして財布やカードケースなどの革製品を作ることですが、一体いつから始まったのか、そしてどのように革が加工されているかをご存じの方はそう多くないはず。
そこで、この記事ではレザークラフトの歴史や皮革の基本知識について解説します。日本だけでなく、世界のレザーについても紹介しているのでぜひ最後までご覧くださいね。
目次
レザークラフトの歴史は皮革の歴史
レザークラフトには皮革が使用されますが、人間の暮らしに皮革が根付いたのは食肉文化が関係しています。
特に食肉文化が盛んだったヨーロッパでは、肉を食べる際に採れる皮を古来よりコートや帽子、靴などに利用していたのだとか。
その証拠に、1991年にアルプスの氷河で発見された冷凍ミイラは毛皮の帽子やコート、レギンス、矢筒、靴といった革製品を身につけていました。彼は通称アイスマンと呼ばれ、紀元前3000年ごろに生存していたとされています。
紀元前3000年といえば、日本でいう縄文時代。レザークラフトという言葉がない時代から、人類は革を使って生活を豊かにしていたのです。
参考記事:「皮革」とは。「人類最古のリサイクル品」と呼ばれる技と歴史|中川政七商店
日本の皮革産業の歴史
日本でも古代より獣の皮を利用した道具が使われていたとされていますが、皮を縫製する技術が伝わったのは4世紀、古墳時代だといわれています。
その後革製品は祭祀の供え物や、天皇や貴族が身につける道具として作られ続けました。そして、戦国時代になると鎧兜、江戸時代になると財布、たばこ入れなど徐々に庶民へと広まっていったのです。
鎖国制度が終わる江戸時代までは日本独自の方法で革の加工が行われていましたが、明治時代には現代の主流であるタンニンなめしやクロムなめしが伝わったとされています。
参考記事:「皮革」とは。「人類最古のリサイクル品」と呼ばれる技と歴史|中川政七商店
参考記事:皮革の歴史(日本)|株式会社Conservation for Identity
参考記事:1000年以上の歴史がある日本の革文化|JLIA 一般社団法人 日本皮革産業連合会
皮革の基本知識
ここからは皮革の基本知識を紹介します。知っているようで知らない豆知識を知れば、レザーアイテムへの愛着も高まるかもしれません。
皮と革の違い
同じ読みをする「皮」と「革」ですが、それぞれ意味が異なります。
皮とは、動物から剥いだままの状態のこと。皮の状態で放置すると腐ったり、乾燥して硬くなったりと道具に使用するには向きません。
一方で革とは「なめし」と呼ばれる処理をした皮のことです。なめしを行うと腐りにくく柔らかくなるため、財布や靴などの加工物には革が使用されます。
なめし・なめし革とは
先述の通り、なめしとは皮を腐らせないようにする処理のことで、なめし革とはなめし処理を行った革のことを指します。
なめしにはいくつか種類がありますが、「タンニンなめし」「クロムなめし」が現代の主流です。
■タンニンなめし
植物に含まれるタンニンという成分を皮に浸透させる方法。約2ヶ月間かけてじっくりと漬け込むため手間と時間がかかりますが、収縮が少なく堅牢、そして色合いに深みが出る点が特徴です。
■クロムなめし
塩基性硫酸クロム塩が主成分のクロムなめし剤に皮を浸ける方法。約1日で成分が浸透することから、早く大量に革を作れます。柔らかく仕上がるため加工がしやすいのも特徴の一つです。
革の種類
一言で革といっても、革にはさまざまな種類があります。
- 牛
- 豚
- 馬
- 羊
- ヤギ
- 鹿
- ダチョウ
- ワニ
- サメ
- エイ
- ヘビ
食肉の文化から、特に牛や豚、馬など家畜として飼育されている動物の革が多く流通しています。それぞれの革には特徴があり、作品の雰囲気によって使用する革は異なります。
世界三大レザーとそれぞれの特徴
ここからは、世界三大レザーとそれぞれの特徴について解説していきます。
名前は聞いたことがあっても、詳しい特徴を知らない方は多いはず。レザーの特徴を知っていると、財布や靴などを選ぶ基準にもなりますよ。
コードバン
コードバンとは、馬のお尻から採取される革のこと。一般的な革と違い、皮のなかにある2mmほどの「コードバン層」を削り出して加工するため、非常に希少価値の高い革として取引されています。
コードバンのもいくつか種類がありますが、もっとも流通している「オイルコードバン(シェルコードバン)」の特徴は“革のダイヤモンド”とも表現される輝きにあります。水分や傷に弱い欠点はあるものの、その輝きは他の革には表現できないほど。高級財布や高級靴におもに使用されています。
ブライドルレザー
ブライドルレザーとは、生後約2年のメスの成牛、もしくは生後3~6ヶ月以内に去勢したオスの成牛から採った皮をタンニンでなめし、牛脂やロウをすり込んだ革のこと。
もともとはイギリスで馬具用に作られていたブライドルレザーですが、その厚みと堅牢性から2000年以上経った現代でも同じ製法で革が作られています。
ブライドルレザーの最大の特徴は革の表面に「ブルーム」と呼ばれる白い粉が現れる点です。よくカビや汚れと勘違いされますが、ブルームは革の内部に浸透させた油分が浮き出て固まったもの。ブルームが徐々に落ちていき、上品で深いツヤとなる経年変化を楽しめる革です。
イタリアンレザー
イタリアンレザーには牛革が使われており、タンニンでなめした革を「バケッタ製法」と呼ばれる伝統技法でオイル浸けにすることで完成します。コードバンやブライドルレザーとは違い革自体は特別な素材ではありませんが、革本来の美しさや独特の味わいが楽しめる革です。
比較的購入しやすい価格帯で、小物からバッグまでなんにでも使用できます。クセがなく自然な風合いで、カラーバリエーションも豊富なためレザークラフト用の革としても重宝します。
日本を代表する国産レザー
ここからは日本を代表する国産レザーについても解説します。
どちらも有名なレザーですが、違いまで答えられる方は少ないのでは?それぞれの特徴について知っておきましょう。
栃木レザー
栃木レザーは、栃木レザー株式会社が製造しているヌメ革のこと。ヌメ革とはタンニンなめしをしてから表面加工をせずに仕上げた革のことです。
化学薬品ではなく植物由来のタンニンで革をなめすことにこだわり、さらに「ヌメ革は硬い」というイメージを覆すほど柔らかく丈夫な点が特徴です。
姫路レザー
姫路レザー有限会社をはじめとするタンナー(皮を加工する職人や企業)が作り出す姫路レザーも、栃木レザーと並ぶ人気を誇ります。
栃木レザーとの違いはなめしの方法です。姫路レザーはクロムなめしが採用されているため経年変化が起こりにくく、買った当初の色合いを長く楽しめるメリットがあります。
レザークラフトの歴史は先人たちの知恵にあり!
レザークラフトはもともと食肉文化から発展して生まれました。やがて皮を革にするなめしの技術が生まれ、現代では当たり前のように財布や革靴、キーケースなどのレザーアイテムが生活に根付いています。
そして、革にはさまざまな種類があり、なめしの方法や動物によって風合いが大きく変わります。革製品を購入する際は、どのような革を使っているのか調べてみるのも楽しいですよ。